相続した故人の借金に対する過払い金請求の方法とメリット、注意点
「亡くなった家族に消費者金融からの借金があった」
「親の遺品整理をしていたら過去に借金していたことがわかった」
亡くなった方の遺品整理をしていたときに、消費者金融やクレジットカード会社との取引明細が出てきて借金が発覚したり、通帳を見たら過去に借金の返済をしていたことが判明したりすることがあります。
亡くなった方の財産は相続して相続人が引き継ぎますが、引き継ぐのはプラスの財産だけでなく、マイナスの財産も引き継ぎます。もし貸金業者からの借金が発覚した場合は、過払い金が発生していないか確認しましょう。
もし過払い金が発生していれば、相続人の方は故人の代わりに過払い金請求することができます。 既に完済している借金であっても、過払い金が発生していれば、払い過ぎていた分のお金を取り戻すことが可能です。
ただし、過払い金が発生していても相続放棄した方がよい場合があったり、相続人の人数によって手続き方法が変わったり、通常の過払い金請求とは異な部分があります。
今回は、故人の財産を相続したときの過払い金請求について詳しく解説していきます。
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もくじ
亡くなった方に借金があった場合は過払い金が発生していない確認する
故人の借金に過払い金があった場合は相続人なら過払い金請求できる
通常、過払い金請求ができるのは、借り入れをおこなっていた本人のみですが、その本人が亡くなってしまっているときは、法定相続人が過払い金請求をすることが可能です。
法定相続人とは、法律(民法)で決まっている相続人のことです。配偶者(夫、妻)や血族(親、子、兄弟姉妹、孫、祖父母など)がこれに当たります。
過払い金が発生する条件
過払い金は貸金業者に払い過ぎた利息のことです。貸金業者がグレーゾーン金利と呼ばれる違法な金利帯で貸し付けをおこなっていたことが原因で発生します。
グレーゾーン金利での貸し付けは、2010年6月の出資法と呼ばれる貸し付け時の上限金利を決める法律の改正に伴い、無くなりました。そのため、2010年6月以前に貸金業者から借り入れしたことがある、または借り入れして現在も返済している場合に、過払い金が発生します。
2007年~2008年頃に多くの貸金業者がグレーゾーン金利から法定内の上限金利に切り替えているので、特に2007年〜2008年以前に借り入れをしていた方は過払い金が発生している可能性が高いです。
残念ながら、2010年6月以降の借り入れに関しては、違法な金利でない可能性が高いので過払い金は発生しません。
- 過払い金が発生する条件について詳しくみる
- 過払い金が発生する条件と請求時に確認すべきポイント
借り入れ先や借り入れ時期がわからない場合の調べ方
亡くなったに借金があることがわかったけれど、取引明細や通帳などがなく、借り入れ先がわからない、いつから借り入れしているのかわかない場合は、信用情報機関に問い合わせることで調べることができます。
信用情報機関とは、個人名や年収、勤務先などの個人情報と、その個人のローンやクレジットカード、公共料金などの支払い状況などの情報を管理している組織です。
日本には3つの信用情報機関があり、貸金業者はいずれかの信用情報機関に加盟しているため、信用情報機関に問い合わせることで借り入れ先の名前や借り入れ日などを調べることができます。
通常、情報開示の手続きは本人のみですが、故人の信用情報の場合は第二親等までであれば代わりに請求可能です。
CIC(シー・アイ・シー): | クレジットカード会社や信販会社が主に加盟している信用情報機関です。CICへの情報開示についてはサイトでご確認ください |
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JICC(日本信用情報機構): | 消費者金融と信販会社が主に加盟している信用情報機関です。JICCへの情報開示についてはサイトでご確認ください |
JBA(全国銀行個人信用情報センター): | 銀行や銀行系のカード会社が主に加盟している信用情報機関です。JBAへの情報開示についてはサイトでご確認ください。 |
過払い金が発生している調査する方法
借り入れ先の貸金業者から取引履歴を取り寄せる
過払い金が発生しているか確認するためには、引き直し計算と呼ばれる方法をおこなう必要があります。
引き直し計算はこれまでに支払った利息を法定内利息に置き換えて計算し直して、実際に支払った利息との差(過払い金)を算出する計算方法です。
貸金業者からいつ借りていつ返済したのかなど、取引詳細がわからないと引き直し計算はおこなうことができないため、借り入れ先の貸金業者から取引履歴を取り寄せる必要があります。
取引履歴はその名の通り、取引内容が記載された書類のことです。法定相続人であれば、故人の取引履歴を取り寄せことができます。
取引履歴は多くの場合でカスタマーサポートセンターやお客様相談窓口などに電話する、ネットからお問い合わせすることで取り寄せることができますが、貸金業者によって取り寄せ方は異なりますので、サイト等で詳細を確認してください。
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自分では引き直し計算する方法
過払い金の引き直し計算複雑な計算方法ですが、無料ソフトを利用することで自分でもおこなうことができます。
- ▼「名古屋式」過払い金引き直し計算ソフト
- 名古屋消費者信用問題研究会が無料で提供しているソフトです。
名古屋消費者信用問題研究会利息計算ソフトをダウンロードするのはこちら
- ▼「外山式」過払い金引き直し計算ソフト
- 新潟県長岡市にあるアドリテム司法書士法人が配布しているソフトです。
アドリテム司法書士法人ソフトをダウンロードするのはこちら
自分で引き直し計算をおこなう場合は、計算ミスをしないように注意してください。万が一、計算を間違えてしまうと、取り戻せる過払い金が少なくなってしまったり、過払い金が請求できなくなったりします。
- 過払い金の引き直し計算について詳しくみる
- 過払い金がわかる利息引き直し計算の方法・無料ソフト、計算が複雑になるケース
過払い金調査を全て司法書士や弁護士に依頼できる
故人の借金に対して過払い金が発生しているかどうか、司法書士や弁護士に依頼すれば全ての手続きを任せることができます。
取引履歴を取り寄せるところから、引き直し計算をして過払い金を算出するところまで、スピーディーにおこなってくれます。特に引き直し計算は複雑で難しく、間違えてしまうとデメリットが発生するため、自分でやるのが不安な方は司法書士や弁護士に依頼するのがよいでしょう。
過払い金が発生していれば、そのまま貸金業者への請求手続きも任せることができるので、遺品整理や相続について話し合いなどで忙しい方は依頼するのがオススメです。
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故人の借金に対して相続人が過払い金請求をおこなうメリット
故人の借金に過払い金が発生していた場合は、過払い金請求することを検討しましょう。ただ、借金を完済しているか、今も返済中であるかどうかで、相続時に過払い金請求するメリットが異なります。
生前に完済していた借金に過払い金が発生している場合はデメリットがない
被相続人である故人が生前に借金を完済していた場合は、過払い金請求することによって発生するデメリットはありません。
支払い過ぎていたお金を取り戻すだけで、手続きをした方の信用情報に傷がつく、いわゆるブラックリストに載ることはありません。
過払い金で返済中の借金を完済できる可能性がある
故人の返済中だった借金に過払い金が発生している場合は、過払い金請求することで、借金を完済できる可能性があります。
返済中の借金に対して過払い金請求した場合は、残っている金額と過払い金を相殺させて返済をおこないます。借金の残りより過払い金の方が多ければ、完済できるうえに、手元に残った過払い金が戻ってきます。
一方で借金の残りの方が過払い金より多い場合は、完済できないため、残った借金の返済を引き継がなければいけません。
返済中の借金に過払い金が発生している場合は、過払い金で完済できるかどうかでメリットは変わります。過払い金があるからと安易に過払い金請求をすると、デメリットが発生することがありますので、事前に司法書士や弁護士に相談して完済できるかどうか確認することが大切です。
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相続した借金を過払い金請求する際の注意点
過払い金請求をすると相続放棄できない
故人の財産は相続人が引き継ぎますが、借金やローンなどのマイナスな財産が多い場合は相続放棄することが可能です。
ただし、一部の財産だけを相続したり、引き継ぎたくない借金だけ相続放棄したりすることはできません。相続するにしても相続放棄するにしても、プラス・マイナス関係なく全ての財産が対象になります。
故人の借金に対して過払い金請求した場合は財産を相続したことになるため、請求後にマイナスな財産が多かったとしても、相続放棄することができません。
そのため、過払い金請求するかどうかは、相続する財産全体を見て判断することが重要です。
相続放棄した後に過払い金請求することはできない
当然ですが、逆も同様に相続放棄した後は、故人の借金に過払い金が発生していたとしても過払い金請求できません。相続放棄することで借金を引き継がなくてすみますが、代わりに過払い金やプラスの財産を受け取れなくなります。
相続放棄は被相続人である故人が亡くなってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てをする必要があります。そのため、故人に借金がわかった場合は過払い金が発生しているかどうか調査して、総合的に財産を相続すべきかどうか、早急に判断することが求められます。
遺品整理や葬儀の準備をおこなうなど、相続以外にもやらなければいけないことが多い場合は、自分でやることが難しいため、司法書士や弁護士に過払い金の調査を依頼するのがよいでしょう。過払い金の調査だけでなく、相続すべきかどうかの判断の相談ものってくれますのでオススメです。
時効が成立すると相続人であっても過払い金請求できない
過払い金請求には時効が存在します。最後に取引した日から10年経つと、時効が成立して過払い金を取り戻すことができません。
生前に借金を完済していて、それから9年後に亡くなって借金していたことがわかった場合は、時効まで後1年になります。
生前ギリギリまで返済をしていた場合は、時効を迎えることはほとんどありませんが、完済していた借金の場合は時効が成立してしまう可能性がありますので、早めに過払い金を調査して手続きをおこなうことが大切です。
- 過払い金の時効について詳しくみる
- 過払い金請求できる期限と時効を止める方法、10年過ぎても取り戻せる条件
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相続人が複数いる場合は手続き内容が変わる
故人の借金に対する過払い金請求は相続人のみがおこなうことができます。相続した人がひとりだった場合と複数いた場合では手続き内容が変わります。
- 各法定相続人が単独で請求をする
- 法定相続人全員で請求する
- 利法定相続人1人が債権譲渡を受けて請求する
相続人が複数いる場合は、の3つの手続き方法があります。
各相続人が単独で請求をする
ほかの相続人とタイミングを合わさず、各相続人が単独で過払い金請求をおこなう方法です。 自分の判断で好きな時に請求ができるうえに、ほかの相続人と相談をせずに手続きを進められるメリットがあります。
ただし、法定相続分の過払い金しか請求できません。発生している過払い金を全部請求できないため、時効を止めることもできません。
また、各々バラバラに過払い金請求することで、貸金業者の対応が悪くなる可能性もあります。
相続人全員で請求する
遺産分割協議をおこない、相続人全員でまとめて過払い金を請求をする方法です。 すべての過払い金を回収できますが、相続人全員が返還される過払い金額に同意をし、和解契約書へ署名・押印する必要があります。
相続人同士の人間関係が良くない場合や相続関係があまりにも複雑な場合は、過払い金請求の手続きがスムーズに進まないことがあります。
相続人の中の1人が代表となって請求する
「遺産分割」もしくは「債権譲渡」をおこなって、相続人の中の1人が代表として過払い金請求をする方法です。
遺産分割して過払い金請求する場合は、相続人の1人が過払い金請求する権利を取得することを明記しした遺産分割協議書が必要になります。
債権譲渡して過払い金請求する場合は、過払い金請求ができる権利を相続人の1人に譲渡することを記載した債権譲渡合意書や債権譲渡通知書が必要になります。
相続人の1人が代表して過払い金請求すると一括で過払い金を回収できますが、後から相続人同士で取り分を清算する場合は、贈与税が発生する可能性があります。
そのため、全員で配分する場合は、手間がかかりますが遺産分割協議をおこなって相続人全員まとめて過払い金請求する方法が望ましいです。
相続人が請求先から借金をしている場合は過払い金と借金を相殺される可能性がある
過払い金請求先となる貸金業者から相続人も借り入れをおこなっている場合、回収した過払い金が相続人の残っている借金に充当される可能性があります。
相続分の過払い金請求であることを明示すれば、相続人の借金と過払い金が相殺されない可能性もありますので、事前に自分の借金の状況も確認するようにしましょう。
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相続人が過払い金請求する際に必要な書類
故人の借金を相続して過払い金請求する場合は、以下の書類が必要になります。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺産分割協議書
- 相続放棄申述受理証明書(相続放棄する人がいる場合)
- 遺言書(財産の分配方法について記載がある場合)
他の相続人から債権譲渡された場合は追加で書類が必要
遺産分割協議で債権譲渡された相続人が過払い金請求する場合、債権譲渡合意書や譲渡した人から貸金業者への債権譲渡通知が必要になる場合があります。
遺言書が必要な場合もある
法定相続分ではなく、遺言書の財産分配方法に沿って過払い金請求をおこなう場合は、遺言書を提出する必要があります。
故人の借金に対して過払い金請求する場合は司法書士や弁護士に相談する
過払い金請求は司法書士や弁護士に依頼せずに、自分でおこなうこともできますが、故人の借金を相続して過払い金請求する場合は司法書士や弁護士に依頼するのがよいです。
相続した借金に過払い金請求するときは、準備しなければいけない書類があったり、相続人の数によって請求方法が異なったり、通常の過払い金請求と違って複雑になります。
また、貸金業者は交渉相手によって対応を変えており、相手が個人であるとわかると強気な姿勢で交渉をおこなってきます。そのため、司法書士や弁護士に依頼するより、過払い金が少なくなる可能性が高いです。
さらに、家族が亡くなった場合は遺品整理や葬儀など、相続以外にもやることが多く、忙しくなりがちです。相続するかしないかを被相続人が亡くなってから3ヶ月以内に決めなければいけませんし、過払い金にも時効があるため、スピーディーに全てを動かすとなると非常に労力がかかり大変です。
司法書士や弁護士に依頼すれば、まるまる過払い金について任せることができるので、手間と時間かけずにすみます。過払い金の調査だけであれば無料でおこなってくれる事務所もありますので、まずは相談してみることをオススメします。
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相続時に司法書士や弁護士に過払い金請求を依頼したときの流れ
-
STEP1:亡くなった方の借入状況を調べる
-
STEP2:過払い金がどのくらい発生しているか調査する
-
TEP3:戸籍の収集と相関図や遺産分割協議書の作成
-
STEP4:貸金業者と交渉する
-
STEP5:過払い金の返還
STEP1:亡くなった方の借入状況を調べる
相続人の方との依頼契約後、亡くなった方の借り入れ状況を「信用情報機関」に問い合わせて調べます。
STEP2:過払い金がどのくらい発生しているか調査する
亡くなった方の借り入れ先の貸金業者が判明したら、貸金業者から、取引履歴を取り寄せて、引き直し計算をおこなって過払い金がどのくらい発生しているか調査します。
STEP3:戸籍の収集と相関図や遺産分割協議書の作成
過払い金の調査と並行して相続に必要な書類を集めます。書類は亡くなった方の戸籍一式や遺産分割協議書、相続関係説明図などが必要です。
STEP4:貸金業者と交渉する
過払い金額が算出できたら貸金業者と交渉をおこないます。 相続人の方の希望を伺って貸金業者と交渉を重ね、最終的な返還額を決定します。
話し合いによる任意交渉で決着がつかない場合は、訴訟を提起して過払い金の返還を求めることになります。
- 裁判を起こして過払い金請求について詳しくみる
- 裁判で過払い金を解決する際に訴訟までの流れ・期間・費用とは?
STEP5:過払い金の返還
交渉がまとまると、返還期日までに貸金業者から過払い金が振り込まれます。 取り戻した過払い金から司法書士や弁護士の依頼費用が差し引かれ、残った金額が返還されます。
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故人の財産を相続するか、放棄するかは、被相続人が亡くなってから3ヶ月以内に決める必要があります。マイナスな財産が多い場合は、相続放棄することがよいですが、貸金業者からの借り入れがある場合は、まず過払い金の調査をおこなってみてください。 過払い金が多く発生していれば相続放棄しなくても済む可能性があり、諦めようとしていた財産を手に入れることができるかもしれません。
故人の借金に過払い金があるか自分で調査するのは時間がかかるうえに、むずかしいため、あまりオススメしません。司法書士や弁護士に依頼すれば調査自体は無料でおこなってくれるうえに、相続するべきかどうか相談することも可能です。
過払い金請求の実績が豊富な事務所に依頼すれば、スピーディーに対応してくれるため、時効も心配する必要はありません。
亡くなった家族に借金があるとわかったときは、1人で悩まずに早めに司法書士や弁護士に相談してみてください。
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